この時期の物語といえば、私としては映画『アイズ・ワイド・シャット』(S. キューブリック監督、1999年)かな。医師の男性(主人公)が、妻との会話から妄想的な嫉妬心を刺激されてNYの街中を放浪し、迂闊にもいくつかの危険な(いずれも官能的な)状況に立ち会ってしまうが、なんとか逃れて家に戻るという、性的な幻想に満ちた作品。迷妄から醒めた夫は、妻に詫びたのち、娘のクリスマスプレゼントを買いに行く。冬の大都市を徘徊する映像は、硬質な荒々しさと浮ついた華やかさを取り混ぜて抜群に美しいし、音楽的にもショスタコーヴィチのジャズ組曲やリゲティのピアノ曲などを配していて面白い。